小松菜

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 小松菜〔こまつな〕は、八潮市特産品。八潮の八つの野菜の一つ。

八潮市ホームページの「八潮の八つの野菜」および関連ページもご覧ください。
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目次

概要

 小松菜は、アブラナ科の野菜。

名称と産地
 小松菜という名称および別称の「葛西菜〔かさいな〕」は、産地の地名に由来する。近世後期の『新編武蔵風土記稿〔しんぺんむさしふどきこう〕』には、「菘〔な〕 東葛西領〔かさいりょう〕小松川(現東京都江戸川区)辺の産を佳品とす、世に小松菘と称せり」とある。一説には「小松菜」という命名は、享保4年(1719年)の鷹狩り〔たかがり〕で小松川の地を訪れた8代将軍徳川吉宗〔よしむね〕によるとされる。名産品の番付「くにぐに名物つくし」(『決定版番付集成』)を見ると、東の前頭に「武州 小松川菜」がある。
 現在は東京周辺のほか各地で栽培されている。

料理
 おひたし・汁の実・あえ物・いため物などさまざまな料理に用いられる。
 「日々徳用倹約料理角力〔すもう〕取組」(「東京都立図書館デジタルアーカイブ」へリンク)というおかずの番付があり、「小松なひたしもの」が前頭に記載されている。
 江戸風の雑煮に小松菜は欠かせない。近世後期の『守貞謾稿〔もりさだまんこう〕』は、「江戸ハ、切餅ヲ焼キ、小松菜ヲ加へ、鰹節〔かつおぶし〕ヲ用ヒシ、醤油〔しょうゆ〕ノ煮ダシ成」と記している。また、『絵本江戸風俗往来』には、「雑煮は餅に添えて小松菜・大根・里芋を通常とす」とある。
 小松菜は春の七草ではないが、江戸の「七草がゆ」はナズナと小松菜を入れたとされる。『守貞謾稿』には、「小松ト云〔いう〕村ヨリ出ル菜ヲ加ヘ、煮ル」と記されている。

市町村別統計―平成18年(2006年)産―

八潮の小松菜

近世
 後谷村の名主藤波祐資〔ゆうすけ〕が文政4年(1821年)に著した(その後の加筆修正もある)農書「行諚記〔ぎょうじょうき〕」(「文政四年『行諚記』について」)を見ると、「年中汁ノ実之〔の〕事」(季節ごとの汁物の実を記載)に、旧暦5月中から6月初めまでの実として小松菜が挙げられている。
 天保6年(1835年)2月、徳川御三卿〔ごさんきょう〕清水家の当主斉彊〔なりかつ〕は、八條領で鷹狩りを行い、大曽根村名主豊田佐五右衛門〔さごえもん〕宅で休息した。この折に佐五右衛門は、「定式御献上品」として白木の台に載せた小松菜を献上している。

近代
 潮止村の昭和7年(1932年)10月農産物調によると、小松菜は作付反別約7町・年間生産数量1万6,350貫・同価額1,461円とある。米(うるち米約238町・もち米約57町)・ネギ(約51町)などと比較すると、主要な農産物とはいえない。

※1町=約99.17アール(ほぼ1ヘクタール)、1貫=3.75キログラム。

現代
 八潮市域で小松菜が本格的に栽培されるようになったのは、昭和30年代(1955年~1964年)からとされる。昭和30年(1955年)頃の伊勢野では、駒込〔こまごめ〕(東京都豊島区・文京区)や小松川などの市場へ出荷していた。現在は八潮の主要な農産物として、東京の市場に出荷されるほか、地元の農産物直売所などでも販売されている。
 平成13年(2001年)には小松菜のマスコットキャラクター「ハッピーこまちゃん」が誕生した。

※ハッピーこまちゃんについては、「八潮市の市章・シンボルマーク・木・花・鳥・歌・マスコットキャラクター」参照 

雑煮・七草がゆと小松菜
 昭和60年(1985年)に刊行された『八潮市史 民俗編』によると、雑煮は、市域の多くの家では餅・里芋・小松菜などを入れたすまし仕立てである。ただし、三箇日の間または七草の日(7日)までは小松菜などの青物を食べない家もある。七草がゆは、家によって異なり、小松菜で済ませる家もある。

※文化14年(1817年)「小沢氏年中行事 草稿」(『八潮市史 史料編 近世2』史料37)によると、雑煮には小松菜を入れない(七草がゆに入れるかは不明)。

参考文献・ホームページ

八潮市立資料館刊行物・収蔵文書

  • 資料館収蔵文書
    • 所蔵 歴史公文書5652-30-2 
    • 寄託 大曽根豊田篤信家文書7・8(複製本CH1180)

その他

  • 青木美智男編『決定版番付集成』(柏書房、2009年)116~117ページ
  • 朝倉治彦・粕川修一編『守貞謾稿 第4巻』(東京堂出版、1992年)76、88ページ
  • 蘆田伊人編集校訂、根本誠二補訂『大日本地誌大系 7 新編武蔵風土記稿 第1巻』(雄山閣、1996年)386ページ
  • 石川英輔『大江戸番付事情』(講談社文庫、講談社、2004年)38~43ページ
  • 亀井千歩子『小松菜と江戸のお鷹狩り~江戸の野菜物語~』(彩流社、2008年)
  • 亀井千歩子『新装版 小松菜の里―東京の野菜風土記』(彩流社、2009年)
  • 後藤朗「「小松菜」の名称と地名「小松」」(『歴史研究』第496号、2002年)
  • 社会科副読本「ふるさと八潮」編集委員会編『ふるさと八潮』(八潮市教育委員会、2011年) 29、47~50、52ページ
  • 鈴木棠三編『絵本江戸風俗往来』(東洋文庫50、平凡社、1965年)17、48ページ
  • 名倉秀子・渡辺敦子・大越ひろ・茂木美智子『実態調査による雑煮の地域的な特徴』(『日本調理科学会誌 第36巻第2号』、2003年)
  • 林英夫・青木美智男編『番付で読む江戸時代』(柏書房、2003年)177、343ページ
  • やしお市民大学編集発行『平成21年度やしお市民大学卒業記念自主研究報告書』(2010年)37ページ
  • 『埼玉年鑑 2008年版〈通巻58号〉 記録編』(埼玉新聞社、2007年)198ページ
  • 『世界大百科事典 10』(平凡社、1988年)480ページ
  • 『日本大百科全書 9』(小学館、1986年)527ページ
  • 東京都立図書館ホームページ
  • 八潮市ホームページ  

関連項目

☆このページの令和2年(2020年)1月23日版(初版)はこちら
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