『れきナビ―やしお歴史事典』:旧版:『れきナビ』講座:八潮の資料で学ぶ 平仮名・変体仮名(20200719版=初版)

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目次

平仮名の成り立ちと変体仮名

 平仮名は、「安」→「あ」のように漢字の草書体に由来します。字源(元になった漢字)やくずし方の違いにより、一つの音に複数の字体の平仮名がありました。明治33年(1900年)の小学校令施行規則によって平仮名の標準字体(いろは47字と「ん」)が定められ、標準字体ではない平仮名は「変体仮名」と呼ばれるようになりました。

※小学校令施行規則(『官報』第5141号)は「国立国会図書館デジタルコレクション」参照(関係箇所は第16条と「第一号表」)

資料1 現在 白玉粉の包装

Taneri-shiratama.jpg
伊勢野種利商店〔たねりしょうてん〕

 現在も使用されている変体仮名の例です。「しら玉の粉」の「し」が、変体仮名(字源「志」)です。

※そば屋の看板などにも変体仮名が使用されています。

資料2 平仮名・真仮名・片国字・其外(ヒラガナ・マガナ・カタカナ・ソノホカ)

Iroha.jpg
八潮市立資料館寄託 上馬場濱野昭家[1]文書1763

 平仮名がいろは順に記載されており、左脇にはカタカナが付されています。平仮名に多くの字体があったことがわかります(ここに挙げられていない字体も存在)。なお、資料の末尾には、略字・合字・数字などが記載されています。
 資料に記載されている平仮名の字源を以下に示します(記載順)。
  い 1以 2以、ろ 1呂 2呂 3路、は 1波 2波 3者 4盤 5盤 6八、に 1仁 2尓 3尓 4丹 5耳 6耳 7耳、ほ 1保 2本 3本 4保、へ 1部(右の部分) 2遍 3邊、と 1止 2止 3登 4登、ち 1知 2知 3知、り 1利 2里 3理 4李、ぬ 1奴 2怒 3怒 4努、る 1留 2留 3留 4累 5流 6類、を 1遠 2遠 3越 4乎、わ 1王 2和 3和 4和、か 1加 2加 3可 4可 5閑 6賀、よ 1与 2与 3与 4余、た 1太 2多 3多 4堂、れ 1礼 2連 3麗 4禮、そ 1曽 2曽 3曽 4楚 5所、つ 1川(州?) 2川 3川 4徒 5徒 6津、ね 1祢 2祢 3年、な 1奈 2奈 3奈 4那 5那 6那 7那 8南、ら 1良 2良 3羅 4良、む 1武 2無、う 1宇 2宇 3有、ゐ 1為 2為 3韋、の 1乃 2乃 3農 4濃 5能 6能 7能 8野、お 1於 2於 3於、く 1久 2久 3具 4倶、や 1也 2也 3屋、ま 1末 2末 3満 4満 5万、け 1計 2計 3希 4介 5遣、ふ 1不 2布 3婦、こ 1己 2己 3古 4故、え 1江 2衣、て 1天 2天 3天 4帝、あ 1安 2安 3阿、さ 1左 2左 3佐 4佐、き 1幾 2支 3幾 4起、ゆ 1由 2由 3遊、め 1女 2免、み 1美 2三 3美、し 1之 2之 3志、ゑ 1恵 2衛 3会、ひ 1比 2悲 3悲 4飛 5飛、も 1毛 2毛 3毛、4裳、せ 1世 2世 3勢、す 1寸 2春 3春 4須 5寿、ん 1无 2舞 3舞

※参考 片仮名の字源:片仮名の字源は次の通りです(いろは順)。伊、呂、八、二、保、部、止、千、利、奴、流(留?)、乎、和、加、与、多、礼、曽、川(州?)、祢、奈、良、牟、宇、井、乃、於、久、也、万(万と末?)、介、不、己、江、天、阿、散、幾、由、女、三、之、恵、比、毛、世、須、(ンは未詳)→片仮名の多くは、漢字の一部を利用して作られています。例えば「イ」は、「伊」の偏(左の部分)によります。「八」→「ハ」のように簡単な漢字の形をそのままとったものなどもあります。
※資料の表題にある「真仮名」とは、「漢字を、そのままの字形で国語の音を示すために用いたもの。万葉がな」(『日本国語大辞典』)です。「変体がなの中には漢字の草体と全く同じものが少くない」(『くずし字解読字典 普及版』8ページ)ことなども踏まえて、資料の「い」~「ん」(片仮名は除く)については、「平仮名」(漢字としても使用されるものを含む)とみなしました。

資料3 明治7年(1874年)改正 小学読本

Shogakudokuhon.jpg
※資料館寄託 大瀬高橋義一家文書2077(高橋家文書は八潮市登録文化財)

 小学校の教科書です。変体仮名が使用されています。
詳細は「『れきナビ』講座:明治の小学校教科書読めますか?」をご覧ください。

資料4 文化11年(1814年) 新撰増補大全商売往来

※新撰=しんせん
Shobai-ourai.jpg
※資料館寄託 高橋家文書2061

 往来物(明治初期まで使用された教科書)の一種で、商売に関する単語集です。振り仮名には変体仮名が使用されています。
詳細は「『れきナビ』講座:くずし字にチャレンジ! 往来物」をご覧ください。

資料館常設展示の古文書

 資料館常設展示室にある古文書に使用されている変体仮名の一部を紹介します。

資料5 慶長8年(1603年) 中馬場村年貢割付状

Nakabamba.jpg
※資料館寄託 中馬場石井明家文書2

 江戸幕府が成立した年の古文書です。抜粋して示した箇所は「中はんは」(中馬場)で、「は」は変体仮名(字源「者」)です。
→資料5の全体の画像はこちら

資料6 慶長17年(1612年) 上馬場村検地帳

Daigaku.jpg
※資料館寄託 濱野家文書320

 八潮市指定文化財の「慶長年間の検地水帳」です。抜粋して示した箇所は「大かく」(大学、濱野忠秀)で、「か」は変体仮名(字源「可」)です。
資料6の解説記事は「こちら

参考文献・ホームページ

  • 朝尾直弘・宇野俊一・田中琢[1]編『角川 新版 日本史辞典 第5版』(角川学芸出版部、2007年)「仮名」
  • 児玉幸多編『くずし字解読辞典 普及版』(東京堂出版、1993年)
  • 児玉幸多編『くずし字用例辞典 普及版』(東京堂出版、1993年)
  • 日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第2版』全14巻(小学館、2000~2002年)
  • 国立国会図書館ホームページ

関連項目

  1. 1.0 1.1 濱野昭家の「濱」は、正しくは異体字の「Hama.jpg」(Unicode:U+6FF5)です。この字は、オペレーションシステムなどの環境により正しく表示されない可能性があるため、本文では正字体の「濱」(常用漢字は「浜」)で表記しています。
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