『れきナビ』講座:八潮の資料で学ぶ 平仮名・変体仮名

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※資料番号の「石井明家」は八潮市立資料館寄託 中馬場石井明家文書、「高橋義一家」は資料館寄託 大瀬高橋義一家文書、「濱野昭家[1]」は資料館寄託 上馬場濱野昭家文書。CHは複製本。
DA.gif=「八潮市立資料館デジタルアーカイブ」(資料詳細画面)へリンク

目次

平仮名の成り立ちと変体仮名

 平仮名は、漢字の草書体に由来します(「安」→「あ」など)。字源(元になった漢字)やくずし方の違いにより、一つの音に複数の字体の平仮名がありました。明治33年(1900年)の小学校令施行規則によって平仮名の標準字体(いろは47字と「ん」)が定められ、標準字体ではない平仮名は「変体仮名」と呼ばれるようになりました。

※小学校令施行規則(関係箇所は第16条と「第一号表」)→ 『官報』第5141号(「国立国会図書館デジタルコレクション」)

【資料1】平仮名・真仮名・片国字・其外

  • 出典:濱野昭家1763 「平仮名ヒラガナ・真仮名マガナ・片国字カタカナ・其外ソノホカ」
  • 画像:
(画像クリックで拡大)

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  • 解説:平仮名がいろは順に記載されており、左脇にはカタカナが付されています。平仮名に多くの字体があったことがわかります。記載されている平仮名の字源を以下に示します(記載順)。
     

い 1以 2以、ろ 1呂 2呂 3路、は 1波 2波 3者 4盤 5盤 6八、に 1仁 2尓 3尓 4丹 5耳 6耳 7耳、ほ 1保 2本 3本 4保、へ 1部(右の部分) 2遍 3邊、と 1止 2止 3登 4登、ち 1知 2知 3知、り 1利 2里 3理 4李、ぬ 1奴 2怒 3怒 4努、る 1留 2留 3留 4累 5流 6類、を 1遠 2遠 3越 4乎、わ 1王 2和 3和 4和、か 1加 2加 3可 4可 5閑 6賀、よ 1与 2与 3与 4余、た 1太 2多 3多 4堂、れ 1礼 2連 3麗 4禮、そ 1曽 2曽 3曽 4楚 5所、つ 1川(州?) 2川 3川 4徒 5徒 6津、ね 1祢 2祢 3年、な 1奈 2奈 3奈 4那 5那 6那 7那 8南、ら 1良 2良 3羅 4良、む 1武 2無、う 1宇 2宇 3有、ゐ 1為 2為 3韋、の 1乃 2乃 3農 4濃 5能 6能 7能 8野、お 1於 2於 3於、く 1久 2久 3具 4倶、や 1也 2也 3屋、ま 1末 2末 3満 4満 5万、け 1計 2計 3希 4介 5遣、ふ 1不 2布 3婦、こ 1己 2己 3古 4故、え 1江 2衣、て 1天 2天 3天 4帝、あ 1安 2安 3阿、さ 1左 2左 3佐 4佐、き 1幾 2支 3幾 4起、ゆ 1由 2由 3遊、め 1女 2免、み 1美 2三 3美、し 1之 2之 3志、ゑ 1恵 2衛 3会、ひ 1比 2悲 3悲 4飛 5飛、も 1毛 2毛 3毛、4裳、せ 1世 2世 3勢、す 1寸 2春 3春 4須 5寿、ん 1无 2舞 3舞

※【資料1】に挙げられていない変体仮名も存在します。
※【資料1】の資料名にある「真仮名」とは、「漢字を、そのままの字形で国語の音を示すために用いたもの。万葉がな」(『日本国語大辞典』)です。「変体がなの中には漢字の草体と全く同じものが少くない」(『くずし字解読字典 普及版』8ページ)ことなども踏まえて、【資料2】の「い」~「ん」(片仮名を除く)については、「平仮名」(漢字としても使用されるものを含む)とみなしました。
※【資料1】の末尾には、合字・数字などが記載されています。
※参考 片仮名の字源:片仮名の字源は次の通りです(いろは順)。伊、呂、八、二、保、部、止、千、利、奴、流(留?)、乎、和、加、与、多、礼、曽、川(州?)、祢、奈、良、牟、宇、井、乃、於、久、也、万(万と末?)、介、不、己、江、天、阿、散、幾、由、女、三、之、恵、比、毛、世、須、(ンは未詳)→片仮名の多くは、漢字の一部を利用して作られています。例えば「イ」は、「伊」の偏(左の部分)によります。「八」→「ハ」のように簡単な漢字の形をそのままとったものなどもあります。

【資料2】慶長8年(1603年)中馬場村年貢割付状

  • 出典:石井明家2 「卯年可納御年貢わり付之事〔うのとしおさむべきおねんぐわりつけのこと〕」
  • 画像:
  • 解説:画像は、【資料2】から抜粋した「中はんは」(中馬場)という文字です。「は」が変体仮名(字源「者」)です。
【資料2】の詳細については、「慶長8年・10年中馬場村年貢割付状(伊奈忠次)」をご覧ください。

【資料3】慶長17年(1612年)上馬場村検地帳

  • 出典:濱野昭家320 「武州喜西郡〔きさいぐん〕上馬場村御検地水帳」 (CH33)
  • 画像:
  • 解説:画像は、【資料3】から抜粋した「大かく」(大学) という文字です。「か」が変体仮名(字源「可」)です。
【資料3】の詳細については、「慶長17年上馬場村検地帳」をご覧ください。

【資料4】文化11年(1814年)新撰増補大全商売往来

  • 出典:高橋義一家2061 「新撰〔しんせん〕増補大全商売往来」 (CH1309)
  • 画像:
  • 翻刻:こちら(PDF)
  • 解説:往来物(明治初期まで使用された教科書)の一種で、商売に関する単語集です。振り仮名には変体仮名が使用されています。
【資料4】の詳細については、「『れきナビ』講座:くずし字にチャレンジ! 往来物」をご覧ください。

【資料5】明治7年(1874年)改正小学読本

  • 出典:高橋義一家2077 「小学読本 巻之〔の〕二」 (CH1312)
  • 画像:
  • 翻刻:こちら(PDF)
  • 解説:小学校の教科書です。変体仮名が使用されています。
【資料5】の詳細については、「『れきナビ』講座:くずし字にチャレンジ! 往来物」をご覧ください。

【資料6】白玉粉の包装(伊勢野種利商店)

※種利商店=たねりしょうてん
  • 画像:
  • 解説:「しら玉の粉」の「し」が変体仮名(字源「志」)です。

参考文献・ウェブサイト

※資料館収蔵古文書などは省略。
  • 朝尾直弘・宇野俊一・田中琢[1]編『角川 新版 日本史辞典 第5版』(角川学芸出版部、2007年)「仮名」
  • 児玉幸多編『くずし字解読辞典 普及版』(東京堂出版、1993年)
  • 児玉幸多編『くずし字用例辞典 普及版』(東京堂出版、1993年)
  • 日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第2版』全14巻(小学館、2000~2002年)
  • 国立国会図書館ホームページ
☆このページの令和2年(2020年)7月19日版(初版)はこちら
  1. 1.0 1.1 濱野昭家の「濱」は、正しくは異体字の「Hama.jpg」(Unicode:U+6FF5)です。この字は、オペレーションシステムなどの環境により正しく表示されない可能性があるため、本文では正字体の「濱」(常用漢字は「浜」)で表記しています。
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